温泉とは?



温泉の歴史

  温泉を人々が利用するようになったのはいつ頃からでしょうか。 有史以前から当然温泉は涌いていたはずです。 実際、温泉の近くで石器時代の石器や土器が見つかることもあるそうですので、かなり昔から利用されていた事は確かなようです。 そして時代が下って、歴代天皇の温泉への行幸や平安貴族たちの温泉入浴の記録なども残っていますが、庶民には馴染みのないものでした。 しかし、いつしか温泉も湯治として広く一般的となり、「弘法大師の発見した湯」や「戦国武将の湯治の湯」等の伝説が生まれたのです。 そして、江戸時代になり寺社詣でなどによる「旅」が一般的となり、温泉もより栄えるようになっていきます。
  明治以降、それまで自然と涌き出ている温泉のみならず、機械による揚湯により温泉地が飛躍的に増加し、昭和の高度成長以降巨大な旅館ができるようになってより身近なものとなっていきました。


温泉って地下の水?


 国語辞典で「温泉」を引いてみて下さい。  「地中から涌き出る温水」とか「温泉のある地域」などと出ていると思います。 では、「温かい地下水」だけが温泉なのでしょうか? 実は、冷たい水であってもいろいろな鉱物成分などを含んでいる地下水も温泉なのです(冷鉱泉といいます)。 でも、いくら成分が入っていても冷たくては「お風呂」の意味がありません。 又、涌き出る温泉は今では数えるほどしかなく、ボーリングをして井戸を掘り、ポンプなどで汲み上げる方法が多くなっています。
 では、温泉水はどのようにしてできるのでしょうか。 いろいろな説がありますが、現在多くの温泉水が循環水であると考えられています。 海水や地表水が太陽熱を吸収して蒸発し、太陽熱によって起こされた上昇気流に乗って上空に運ばれると、温度が下がって水蒸気は凝結して雲を作り、雨や雪となって海や陸地に降ります。 陸地に降った水の一部はすぐに蒸発しますが、大部分は流水となって海に入り、一部は地中にしみこんで地下水となります。地下では深くなるほど次第に温度が高くなっています。 また、火山地帯では地下数キロから十数キロメートルという比較的浅いところに深部から上昇してきたマグマがマグマ溜まりをつくり、1000℃以上の高温度に保たれて熱を発散し、時に地表に溶岩やガスを噴出して火山活動をしているところがあります。マグマ溜まりは通常数万年から数十万年の寿命を持ち、ある程度冷却し、結晶化して岩石となった後も高温岩体として長く熱を持ち続けます。
 地下に入った水がこれらの地下の熱に温められ、時にマグマのガスから分かれた熱溶液が混入して温度が上がると共に流動中にまわりの岩石からも成分を溶解するなどして水質が変化した熱水が温泉水の基になると考えられています。   

温泉が地上に出るまで


  温泉はどのようにして地上に出てくるのでしょうか。 昔は、自噴や湧出のように自然と地上に出てくる温泉がほとんどでした。 しかし、機械の発達によりボーリングにより井戸を掘ることができるようになりました。 しかし、近年新しく掘る温泉井戸は温泉水の位置が深くなり、2000メートル以上掘らなければならない温泉もあります。 この温泉を地上に出すには、水中ポンプやコンプレッサー(空気圧縮機)を使用して汲み上げます。 水中ポンプには浅い井戸用のモーターが地上にあるタイプとモーターが水中にある深井戸用があります。 しかし、最近の温泉井戸はかなり深くなっていますので水中ポンプを1500メートルまで入れるところも出てきているようです。
 コンプレッサーを使用する方法は、揚湯管(温泉を汲み上げる管)の中に圧縮空気を送る管を入れ、その圧縮空気により温泉を押し上げる方法です。 この方法は、泉温の高い温泉や以前は深い温泉井戸に使用していましたが、コンプレッサーの音がうるさいことやメンテナンスが大変なことなどや、水中ポンプの性能も上がったことなどから最近はあまり使われなくなってきています。 温泉地に行きますとよく櫓が立っていますが、ほとんどはこの方法の源泉のところに立っています。
 温泉情緒を醸し出していたこの温泉やぐら(写真左上)も、最近少なくなってきていますのでちょっと寂しい気もします。 
 一般的には、こうして地上に出てきた温泉を一度「温泉タンク」に貯めます。

地上に出た温泉がお風呂に出てくるまで

 温泉タンクに貯められた温泉が、浴槽へ 来るまではどうでしょうか。 温度のちょうどよい温泉でしたらそのまま浴槽へ入れてしまってもいいでしょう。 しかし、温度の高い温泉ですと泉温を下げませんと入ることはできません。 有名な方法としては、草津温泉の「湯揉み」などがあります。 また、水を入れて下げているところもあります。では、温度の低い温泉はどうでしょうか。 当たり前のことですが、温度を上げなくてはなりません。 また、温泉の汲み上げ量の少ない温泉は浴槽のお湯を循環させなくてはなりません。
 このように、地上に出てきた温泉をお風呂で気持ちよく入るためにはいろいろな設備が必要となります。 最近の温泉では、温泉資源の有効利用という見地から、温泉循環装置を利用している施設が増えています。
 この循環装置はどのような仕組みなので しょう。 まず浴槽から温泉を引き込み、除塵器(ヘアーキャッチャー)を通して濾過器で不純物を取り出して、熱交換機により昇温した温泉を浴槽へ戻すという方法です。 そして、人が入って溢れてしまったりして不足した温泉は、温泉タンクより補給します。
 日本人が一般的に好む温度は42℃とい われていますが、この温度を保つのは大変 なことなのです。


温泉の泉質

温泉とは、1948年(昭和23年)にできた温泉法により、源泉で測定したときの温度が25℃以上か、25℃以下でも表の成分がどれか一つでも規定量以上含まれていれば温泉であると定義されています。また、この温泉法では温泉水でなくても水蒸気、その他ガス(炭化水素を主成分とする天然ガスをのぞく)も、温度または成分が条件を満たしていれば温泉とされます。
 この温泉法が制定されたのは、温泉の開発に伴って涌出量の減退、温泉の権利に関する紛争などの問題が出てきて、温泉の保護と適正な利用をはかるため法律を作る必要が生じたからです。そして、この温泉法では一般常識よりも広い意味に定義しています。


温泉法に規定する温泉の含有物質と含有量

物  質  名 含 有 量(1s中)
溶存物質(ガス性のもの)     総量1000mg以上
遊離二酸化炭素 250mg以上
リチウムイオン 1mg以上
ストロンチウムイオン 10mg以上
バリウムイオン 5mg以上
総鉄イオン 10mg以上
マンガンイオン 10mg以上
水素イオン 1mg以上
臭素イオン 5mg以上
ヨウ素イオン 1mg以上
フッ素イオン 2mg以上
ヒ酸水素イオン 1.3mg以上
メタ亜ヒ酸イオン 1mg以上
総硫黄  1mg以上
メタホウ酸 5mg以上
メタケイ酸 50mg以上
炭酸水素ナトリウム     340mg以上
ラドン       100億分の20キューリー単位以上
ラジウム塩 1億分の1mg以上

温泉の分類

・温 度
 温泉の湧出口での温度(泉温)により分類。

冷鉱泉 25℃未満
低温泉 25℃以上〜34℃未満
温 泉 34℃以上〜42℃未満
高温泉 42℃以上

・水素イオン濃度(pH) 

酸性泉 pH3未満
弱酸性泉 pH3以上〜6未満
中性泉 pH6以上〜7.5未満
弱アルカリ泉 pH7.5以上〜8.5未満
アルカリ泉 pH8.5以上

 酸性泉は物質を溶かす力が強いため、浴槽で温泉法に該当する水質を生じやすく、アルカリ泉は反対に物質が沈澱しやすいため、浴槽で含有成分が少ない水質になりやすい傾向があります。 

・溶けている成分の量(濃度)

低張泉 人体の細胞液よりも低い浸透圧を持つ。
(溶存物質が水1s中8g未満)
等張泉 人体の細胞液とほぼ等しい浸透圧を持つ。
(溶存物質が水1s中8〜10g)
高張泉 人体の細胞液よりも高い浸透圧を持つ。
(溶存物質が水1s中10g以上)

 ちなみに、点滴などに用いる生理的食塩水は、蒸留水1g中に塩化ナトリウムを約9c含みます。つまり高張泉は、温泉の成分が細胞膜を通して人の体にもっとも入りやすいのです。

・その他
 浸透圧による分け方とにていますが、やはり人体に対する作用の刺激の強さ、すなわち「緊張度」によって大別することもあります。刺激の作用の強いものを「緊張性といい、泉質では酸性泉、硫黄泉、単純炭酸泉、炭酸鉄線、緑ばん泉、明ばん泉などです。また刺激の弱いものを「緩和性」といい、単純温泉、食塩泉、重曹泉、ぼう硝泉、石膏泉、重炭酸土類泉、放射能泉などです。

 このような温泉の分類法がありますが、一般的に用いられている分類は温泉水の含有成分の種類とその割合、つまり温泉水の化学組成による分類です。
 温泉水には非常に多くの無機成分が溶け込んでいます。大部分の成分は水中でプラス又はマイナスの電気を帯び、陽イオン陰イオンとなって存在しています。陰陽両イオンは、溶液が電気的な中性を保つよう量的にバランスを保っています。
 この温泉水を蒸発乾固させると水分は逃げ、溶存成分の陽イオンと陰イオンが結合して、炭酸水素塩(重炭酸塩)、塩化物塩、硫酸塩などの形の塩類となって析出します。従って、温泉の泉質の多くはこれらの塩類の名前で示されています。蒸発させて固体の形で得られる塩類、その他の成分は固形成分とも呼ばれます。
 主な塩類の他に硫黄、硫化水素を始め水質の酸性に寄与する水素イオン、水量ないし微量含まれる銅、臭素、ラドン、ラジウムなどの成分や、ガス成分の遊離二酸化炭素など、医学的に有効な成分が分類の考慮に入れられます。さらに、溶存固形成分が少量(温泉水1s中に1g未満)で泉温が25℃以上のものも分類上1つの泉質とされ、合計11種類の泉質に大別されます。


主要泉質の分類と化学的特徴

 旧 泉 質 名 
 (新泉質名)
化  学  的  特  徴 
単純温泉
(単純温泉)
泉温が25℃以上で、固形成分は水1s中1000mg(1g)未満。 一般に無色透明、無味、無臭。
単純炭酸泉
(単純二酸化炭素泉)
水1s中に遊離二酸化炭素1000mg以上を含み固形成分は1000mg未満。 サイダーのような酸味がある。
重炭酸土類泉
(カルシウム(マグネシウム)
 −炭酸水素塩泉)
水1s中に固形成分1000mg以上を含む。 陰イオンとして炭酸水素イオン、陽イオンとしてカルシウムイオンとマグネシウムイオンが主成分。
重曹泉
(ナトリウム−炭酸水素塩泉)
水1s中に固形成分1000mg以上を含む。 陰イオンとして炭酸水素イオン、陽イオンとしてナトリウムイオンが主成分。
食塩泉
(ナトリウム−塩化物泉)
水1s中に固形成分1000mg以上を含む。 陰イオンとして塩素イオン、陽イオンとしてナトリウムイオンが主成分。 味が塩辛い。
硫酸塩泉
(硫酸塩泉)
水1s中に固形成分1000mg以上を含む。 陰イオンとして硫酸イオンが主成分。 陽イオンとしてマグネシウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオンを主成分とする場合をそれぞれ正苦味泉,ぼう硝泉,石膏泉という。
鉄泉
(鉄泉)
水1s中に鉄イオン20mg以上を含む。 陰イオンとして炭酸水素イオンを主成分とする炭酸鉄泉と、硫酸イオンを主成分とする緑ばん泉に分かれる。 涌出時は無色だが、空気中で酸化して褐色の沈澱物を生じ、濁っている。
明礬泉
(アルミニウム−硫酸塩泉)
水1s中に固形成分1000mg以上を含み、陰イオンとして硫酸イオン、陽イオンとしてアルミニウムイオンが主成分。
硫黄泉
(硫黄泉)
水1s中に硫黄2mg以上を含む。 硫化水素を含まない狭義の硫黄泉と、硫化水素を含む硫化水素泉に分かれる。 ゆで卵の腐ったような臭いがする。 涌出時は無色透明だが、次第に硫黄分が沈澱して白濁している。
酸性泉
(酸性泉)
水1s中に水素イオン1mg以上を含み、塩酸や硫酸のような遊離鉱酸を構成する。酸味がある。
放射能泉
(放射能泉)
泉源で水1g中にラドンを100億分の30キューリー単位以上、又はラジウム1億分の10mg以上を含む。