長いトンネルを抜けて目の前に開ける日本アルプスを彼方に望み、浅間を此方に見る地にある温泉。 揚湯量も毎分300リットルと豊富な湯量を誇る美肌温泉。 浴槽も広くこんこんと出てくる温泉に浸かりながら大自然に想いを。

地下の機械室。 広々としてそれぞれの機械もゆったりと整然と配置されています。 掃除も行き届いており、「ここが機械室」と思うほどきれいです。 オーナーの温泉に関する思い入れが感じられます。

浴槽の縁も黒御影を使って落ち着いた感じですが、ペンキを塗ったように一面にスケール。 せっかくのオーナーの思いも雲散霧消。 オーナー以下従業員が真夜中に掃除。 掃除してもまたすぐ付いてしまう。 数日掃除をしないともう大変。 張り付いてしまい、これがなかなか取れない。 ハンマーでコツコツ叩くと、煎餅のようにパリパリ取れる。 けれど、やりすぎると御影石まで割ってしまう。 強力な薬品で溶かしてしまおう。 注意書きに「換気をよくして、直接手では触れないでください」。

お客様から「せっかく温泉がいいのに、掃除をしないのですか」。 また真夜中の掃除。 睡眠不足....



温泉を自分で掘ることができたらいいのにな、と思うことがありませんか。 自分で掘った温泉にいろんな人が入ってもらえたら感動的だろうな、と思います。 でも実際には昔から湧出しているような場所を除いて、地下何百メートル、場所によっては千メートル以上掘らなければ温泉はでてきません。 今ではいい掘削機械がありますので、さ程の時間をかけずに温泉を掘ることができます。 しかし、多額のお金がかかります。

自分で掘削機械を買い、たった一人で温泉を掘ってしまった親父さんがいます。掘っているときの苦労話を聞いていると時間が経つのも忘れてしまいます。壮絶な苦労があったはずなのに、笑顔で話す親父さんの顔はとっても優しいです。

まさしく「秘湯」。冬は道が閉ざされてしまうため専用車で迎えてくれます。 機械がどこか壊れてしまっても、容易には修理に来てもらえません。 そこで、何でもやってしまう若旦那。 ある時は調理人、またあるときは大工さん。

宿を建て替えたとき、昔からの檜浴槽と古代檜を使った広い浴槽を作りました。ところが、程なく真っ白なペンキ状態。 お客様からも「何でせっかくの檜にペンキなんか塗るの」といわれる始末。 仕方なくハンマーでコツコツ。温泉の配管が詰まってしまい「お湯が出ない」。 ただでさえ忙しいのに配管も取り替えなくては。 スケールのおかげで、機械までパンク。 お客さんのいない時間に修理のため親父さんと二人で機械の運び出し。 直ったらまた別のところが。

「すいませーん、TVの取材をお願いしたいのですが」。 苦労を顔に出さず、笑顔で取材。四季を通じて取材が入ります。

「この苦労がなければ、その時間をお客様へのサービスに向けられるのですが」と若旦那。



小説を初めとしてテレビや映画などで様々な温泉が紹介されています。それによって宣伝となりお客様が集まってきます。 時として許容範囲を超えて来てしまうため、素朴な雰囲気を醸し出していた温泉では昔ながらの風情が無くなってしまいがっかりしてしまうことがあります。

山間に温泉旅館だけの集落があります。 そこだけ俗世から忘れさられて「温泉」しかありません。 頑ななまでに「温泉地」を守り通している乳白色の温泉。湯船にできたスケールが情緒を醸し出しています。 泉質で硫化水素が多いため、ここに来ると温泉らしい「硫黄」のにおいが漂っています。

泉温は48℃と浴槽ではちょうど良くなる温度。 湯量も十分ありまさに混じりっけ無しの温泉。 こんないい温泉でもいたずらをします。 情緒を醸し出すスケールが、温泉を流す配管を詰まらせてしまいます。 泉質でガス成分が多いためガス抜きをしなければならないのですが、ガスを抜くとスケール化しやすくなってしまいます。 ここの温泉は皮膚病の方に非常に効果があるため、何日も宿泊される方も多く温泉を止めることはできません。 配管が詰まってしまうと温泉が出なくなってしまうので、定期的に配管を交換しています。 

冬になりますと根雪で2mも積もるそうです。 そんなところをかき分けて温泉の配管のところまで辿り着きます。 しんしんと雪の降り積もる中、悴む手を温泉の温もりにかざしながら作業します。 お客様にいい温泉に入っていただくために格闘します。

雪の降り積もる中の露天風呂は、これぞ「醍醐味」。頭に手ぬぐい代わりの雪を載せ、首から下は至福の喜び。温泉はやめられません。



何度も訪れていながらいつも雨。でもそんな「雨」がよく合うのは、昔はやった歌のせいでしょうか。 霧雨に噎ぶアルプスの山々を眺めながらの温泉は、改めて自然の雄大さを実感します。

冬の寒さはとても厳しく、明け方「ダイアモンドダスト」を見られます。 温泉櫓が建ち並ぶ中の神秘的な現象を眺めていますと、自然の不思議さを見せつけられた気がします。

泉温は地上部で100℃近くあります。 自噴していますので、1歩間違えると大やけどを負ってしまいます。 この源泉がスケールで詰まってしまいます。 1週間も経たずに詰まってしまうので5日に1度源泉の掃除をしています。 100℃の温泉が噴きだしてこないように沈めてからでないと掃除もできません。 掃除をしている最中も、いつ噴き出してくるか判らないのでなだめすかしながらの作業です。 自噴泉は、大地と直接相手をするので毎日様子を見なければなりません。 子供の体を気遣うように。

近頃はどこでも後継者不足。 源泉を掃除する会社も危険なためあまりやりたがらなくなり、これから先いつか自分たちで掃除をしなければならなくなりそうです。 旅館を切り盛りしながら日々源泉を見守っていくのはとても大変です。 でも大自然の中のいい温泉。 いつまでも残していってもらいたいです。

温泉の裏方さん

温泉は、裏方さんの日々のお仕事で維持しています。
そんな「温泉守」のお話をちょっと。