温泉の湯の花


 温泉に入りますと、よく浴槽の周りなどに白くて硬いものが付着しています。また、まだ誰も入っていない温泉の表面に白っぽいものが膜を作っています。これが、湯垢、湯の花と呼ばれるものです。そして、これは専門的には「温泉のスケール」と呼んでいます。この温泉のスケールは、温泉水に元々溶けていた成分が温度や圧力の変化、空気との接触、場合によってはパイプなどの機械と反応して水に溶けにくい物質として析出したものです。この析出付着物を採取し、「湯の花」として温泉地などでよく売っています。これを家庭のお風呂へ入れ、手軽に温泉気分が味わえるということでよく売れるそうです。
 では、この湯の花(温泉スケール)はいいことばかりなのでしょうか。実はこれが温泉を守っている人たちにとって最大の悩みなのです。一般的には、温泉の成分が多ければ多いほど温泉スケールは析出しやすくなります。この温泉スケールが湯の花の採取場所のみで析出するのであればいいのですが、温泉の井戸の中、パイプ(上の写真)、設備機器などで析出してしまいます。そのため、温泉の管理というのは大変なことなのです。温泉を守る人は、温泉を楽しみにきていただくお客様がいつでも快適に入浴していただくために、時に夜中にこのスケールが詰まってお湯がでなくなってしまったり、温度調整ができなくなってしまったりしないように日々闘っているのです。


温泉スケールの種類

カルシウム(石灰)質のもの 
 温泉水中でカルシウムは、二酸化炭素(炭酸ガス)と共に加圧された状態で重炭酸カルシウムとして溶けていますが、地上に出てきて二酸化炭素が水中から逃げると重炭酸カルシウムが分解して炭酸カルシウムとして沈殿します。 多くは灰色〜白色で硬く付着するのが普通ですが、時には鉄やマンガンが含まれ赤褐色〜黒褐色で縞、層状になっていることもあります。
 日本の温泉スケールの80%以上がこの炭酸カルシウム質のものです。
鉄質のもの  
 温泉水中に溶けている鉄(化学的にはフェロイオンといいます)が酸化されて、不溶性の鉄(化学的には水酸化第二鉄)となって沈殿したもので、赤褐色〜黄褐色〜黒褐色、軟らかく付着する時と硬く付着する時があります。
 鉄を含む微酸性〜中性の温泉では、必ず鉄イオン(T)の酸化が起こり温泉水中に酸化鉄が浮遊して浴槽水が茶褐色に濁り、浴槽の縁やタイルに付着しているのが見受けられます。 また、まれに硫化水素と鉄が結合して、硫化鉄の黒い沈殿を生成することもあります。
 
イオウ質のもの
 温泉水中の硫化水素が酸化され、不溶性のイオウとなって析出付着したもので、硫黄細菌などが関係することがあります。 白〜黄白〜黄色で普通はあまり硬くないのですが、まれに硬く層状に付着することがあります。 草津の湯畑で採取している湯の花は、この類です。
ケイ酸質のもの
 地下の高温高圧状態で溶けていたケイ酸が地表へ涌き出ると、低温低圧の状態で不溶性の二酸化ケイ素として析出付着したものです。 普通は白色で硬く付着します。
 地熱発電の生産井ではよく見受けられるスケールですが、一般の温泉ではまれです。
その他のもの
 粘土質のもの、マンガン質、硫化銅、有機質のもの、菌体とスライム等いろいろありますが、これらは比較的まれな例です。