温泉施設の障害 | スケール障害 | 泉源の停止、湯量の低下、送湯ポンプ,熱交換器,ボイラー等の機能低下,浴槽の汚れ,不快感。 |
腐 食 | 施設の機能低下,温泉の汚れ,不快感 | |
浴室のカビ | 不快感 | |
露天風呂の緑藻 | 不快感 | |
温泉スケール | 送湯管等に付着するものは、一般的に湯垢・湯の花(華) ・温泉沈殿物・温泉華などと言われていますが、専門的には温泉のスケールと呼んでいます。温泉のスケールは、温泉水にもともと溶けていた成分が温度や圧力の変化,空気との接触,場合によってはパイプなどの機材と反応して、水に溶けにくい物質として析出付着したものです。 なお温泉本来の成分ではありませんが、地層中からまぎれ込んだ土砂類や、うめ水が河川水や地下水の場合、それに含まれる生物(藻類や細菌類)がもとで発生した不溶物も、スケールの中に含めることがあります。 | |
スケールの種類 | カルシウム(石灰)質のもの | 温泉水中でカルシウムは、二酸化炭素(炭酸ガス,CO2 )と共に加圧された状態で、重炭酸カルシウム[Ca(HCO3)2] として溶けていますが、二酸化炭素が水中から逃げるとCa(HCO3)2 が分解して炭酸カルシウム[CaCO3]として沈殿します。多くは灰白~白色で硬く付着するのが普通ですが、 時には鉄(Fe2O3,FeS)やマンガン(MnO2 )が含まれ赤褐色~黒褐色縞,層状になっていることもあります。 |
鉄質のもの | 温泉水中に溶けている鉄(化学的にはフェロイオン,Fe2+ といいます)が、酸化されて不溶性の鉄(化学的には水酸化第二鉄,Fe2O3・nH2O) となって沈殿したもので、赤褐色~黄褐色~ 黒褐色、軟らかく付着する時と硬く付着する時があります。 鉄を含む微酸性~中性の温泉では必ず鉄(Fe2+ )の酸化が起こり、温泉水中に Fe2O3・nH2O が浮遊して浴槽水が茶褐色に濁り、浴槽のへりやタイルに付着しているのが見受けられます。 またまれに硫化水素と鉄が結合して硫化鉄(FeS)の黒い沈殿を生成することもあります。 | |
イオウ質のもの | 温泉水中の硫化水素が酸化されて不溶性のイオウとなって析出・付着したものでイオウ細菌などが関係することがあります。 白~黄白~黄色で普通はあまり硬くないのですが、稀に硬く層状に付着することがあります。草津の湯畑で採取している湯の花はこの類です。 | |
ケイ酸質のもの | 地下の高温加圧状態で溶けていたケイ酸が地表へ湧き出ると、低温・低圧の状態で不溶性のSiO2・nH2O として析出・付着したもの。白色で硬く付着するのが普通です。 地熱発電の生産井ではよく見られるスケールですが、一般の温泉では大変まれです。 | |
その他のもの | 粘土質のもの・マンガン質(Mn2O3),硫化銅(CuS),有機質のもの菌体とスライム等いろいろありますが、これ等は比較的まれな例といえます。 |
温泉スケール対策
カルシウム質スケールの抑制法 | カルシウム質スケールは石灰華とも言われ、化学的には炭酸カルシウム を主要成分とする最もありふれた沈殿物です。 どのような機構で生成するのかと言いますと、地下で加圧状態で沈殿物 の成分はすべて溶けた状態になっています。これが地表に湧出しますと、 一気圧前後の空気にふれて、温泉水中から炭酸ガスの一部が空気中に逃げて、炭酸カルシウムが沈殿します。 これを化学式で記しますと次のようになります。 Ca(HCO3)2 → CaCO3↓ + CO2↑ + H2O 炭酸カルシウムが沈殿する時、温泉水中のケイ酸・鉄・マンガン・マグネシウム等が、沈殿物中に取り込まれます(共沈)。 従って、生成した沈殿物(スケール)の色は共沈した成分の種類・量によって白色~灰白色~赤褐色~黄褐色~黒褐色を呈します。 |
温泉スケール防止剤
固形スケール防止剤 ・ENTERⅠ | 重合燐酸塩を主成分とするガラス状塊です。 |
液体スケール防止剤 ・SPR#10 | 耐熱性・耐加水分解性に優れた液状燐酸塩化合物のスケール防止剤です。固形スケール防止剤との併用により、お互い少ない添加量で相乗効果を発揮し、条件の厳しい温泉に対してもスケール抑制を行います。 |
液体鉄対策剤 ・SPR-F | 鉄スケールを防止する鉄対策剤です。鉄分の多い泉質では、カルシウムスケール防止剤と併用します。 |
スケール防止剤の温泉への適用 | スケール防止剤は、水(温泉)に溶けても中性ですので温泉のpHは変わりません。 またスケールを溶かして除去するものではなく、炭酸カルシウム(CaCO3)の結晶の形を変形させてスケール化 し難くする穏やかな作用であり、従来の温泉成分にごく少量のリン酸塩が加わるだけで泉質そのものを変えることはありません。 なおスケール防止剤の安全性につきましても、給水用防錆剤(赤水防止)として厚生省より使用が認められた品質規格適合のものや、食塩よりはるかに安全性の高いものを使用しており、しかも添加量も前述のように数ppm と、非常に少ない量でコントロールしますので、安心してご使用頂けます。 |